総評

　ご利用いただきましたユーザーの皆様に支えられれ、ツギクルは2017年7月に無事1周年を迎えることができました。このタイミングで開催しました第2回ツギクル小説大賞は、約1カ月という短期間にもかかわらず133作品のエントリーがあり、ご参加いただきました皆様には心より感謝申し上げます。

　今回のテーマは、ツギクルブックスでも刊行実績のある「ファンタジー」です。一口にファンタジーといってもハイファンタジーやローファンタジーなどに分類できますが、今回のツギクル小説大賞では異世界転生・転移系ものから現代もの、VRゲーム系、SF要素や歴史要素の含まれるものなどさまざまな作品が集まり、ファンタジージャンルの幅の広さを改めて実感しました。

　ツギクル編集部での選考の結果、一次通過として14作品を9月15日に発表しました。この中から今回の受賞作品は、大賞が「Ｒｅ：ビルド！！　〜転生ゲーマーの異世界最強マイホーム建設日記〜」と「弱小貴族に転生した俺は、大貴族に滅ぼされ無い様に必死に頑張る！」、優秀賞は該当作なしとなりました。また、ファン投票賞は「召喚された世界でも、俺はメカ少女しか愛せない！」、AI審査賞は「金色の師弟」です。

　大賞の「Ｒｅ：ビルド！！　〜転生ゲーマーの異世界最強マイホーム建設日記〜」は、生産・開拓ファンタジーに「スローライフ」「イチャラブ」などの要素をバランス良く取り入れており、人気のトレンドをおさえた作品でした。舞台となる世界の謎が徐々に明かされていく展開など、読者を引き込む力があるのも特徴です。
　もう1つの大賞である「弱小貴族に転生した俺は、大貴族に滅ぼされ無い様に必死に頑張る！」は、周りを巻き込みながらトラブルを解決していく主人公など登場人物のキャラ設定に特徴があり、特にメイド長の存在感には圧倒されるものがありました。テンポの良いセリフが、キャラ立ちの効果をより高めているのも評価ポイントです。

　ファン投票賞を獲得した「召喚された世界でも、俺はメカ少女しか愛せない！」は、転移した世界に戸惑いながらも自分の主張を貫き通す主人公の姿に、メカ少女への著者の深い愛を感じました。ヒロインの意外な面が成長していく様子を描くなど、今後の展開が楽しみになる仕掛けがあるのも、読者に受け入れられた要因だと思います。

　ツギクルでは、ファンタジー作品の傾向をAIで分析しています。各作品のジャンル構成の平均を見ると、ファンタジー要素の16.7%に続いて、恋愛要素が14.9%、SF要素が12.9%という結果になりました。ファンタジー要素が高いのはもちろんとして、物語にはやはり恋愛要素が欠かせないようです。
また、特徴語をピックアップしたところ、「ギルド」「スキル」「スライム」「ドラゴン」などのよくあるキーワードに加えて、「先生」「先輩」「父親」「兄」「姉」といった目上の人物が目立ちました。小説の主人公が目上の人物の影響を受けることは多いと思いますが、ファンタジー作品ではその傾向が強いようです。

　作品のジャンル構成や文章構造などをAIが総合的に判断し、数値化したものがAI値です。今回のエントリー作品の中で一番AI値が高かったのは「金色の師弟」で、この作品をAI審査賞としました。文章構造の各項目では平均値が多く、読みやすさなどで高得点を獲得したことがAI値に影響したようです。現在の人気作のトレンドに近いものほど高いAI値となりますので、1つの指標にはなるかと思います。

　最後になりますが、ツギクル小説大賞にご応募いただきました皆様、そしてご投票いただきました皆様、誠にありがとうございました。

　今回の結果は、ファンタジーをテーマとしてツギクル編集部が選定した、現時点での基準によるものです。選外の作品の中にも多くの原石が埋まっているはずです。今回の結果にかかわらず、今後も執筆活動を続けていただけることを願っております。

ツギクル編集部
応募点数　133作品